これは西暦が使われなくなり、2000年代の記録がほとんどなくなってしまった時代の話。
世界は一つの国に統一され、言語、通貨、全てが世界共通のものとなった。
統一に至るまでに、多くの戦争や反乱が起き、人口は激減した。
多くの生き物の血が流れ、国が消えた。
最初に統一を宣言し、戦争の引き金となった国は、統一がなされる40年前に滅んでいる。
そして、全てが統一されて100年。
40年までは小さな諍いはあったが至って平和に、80年ごろから世界は綻び始め、100年目にして平和は決壊した。
人口の問題である。
戦争により激減した人口はリバウンドし、100年前の人口の二倍以上に膨れ上がっていた。
世は平和になり、全員が統一を認めたとき、この世界から戦争は消滅した。
平和が新たな問題を生み出してしまったのだ。

人口増加それに伴う食糧問題や資源の消費。あらゆる物資の生産ラインが追いつかなくなり始める。それによる物盗りや暴行。
このままでは10年もしないうちにお金が意味を成さなくなり、暴力の世界になるのは誰の目にも明らかだった。
政府が取った最後の手段。それは機械に責任を押し付けることだった。
マザーコンピューター「ワールド」。それはあらゆる生産業の効率化のために国家予算の三分の二を費やし作られたものだった。
「ワールド」はコンピューターだが、人間のような柔軟な思考、人間を凌駕する知能を有している。
「ワールド」はまず、あらゆる機械を支配した。
工場などで使われている人が操作する作業ロボットはおろか車やモノレールと言ったものも「ワールド」の管理下におかれた。
これにより工場の作業能率は上がり、事故は激減した。
他にも医療マシンの完全自動化によりよる医療ミスの減少。完全自動パトロールカーによる犯罪現象。
暴徒鎮圧の際も人ではなくロボットが出動し、殲滅した。
人のように情に流されることもなく、ただ作業をこなすように犯罪者を殺してゆく。殺すと言う点において、ロボットは完璧だった。

「ワールド」の登場により、あらゆる問題は解消されたかに見えたが、また新たな問題が浮上した。
失業者である。ロボットの活躍により、労働者の7割はリストラの憂き目に会った。
物資などの生産力は確かに上がった。しかし、それを買うためのお金を失業者は手に入れることはできない。
当然の如くデモが起きた。「ワールド」は、デモ行進者を暴徒とみなし、全てを殺した。
この惨劇により、国民は「ワールド」と政府を非難した。「ワールド」を破壊すべきだ。と言う者まで現れた。
その主張に賛同した者達全員を反逆者とみなし、「ワールド」は賛同者全てを殺した。
この事件によりもはや「ワールド」を弁護するものは一人もいなくなった。
「「ワールド」は狂っている、破壊すべきだ。」
みんなの心は一つになった。民衆は手に武器を持ち、「ワールド」を破壊に向かった。

「ワールド」は考えた。
―――何故事件を解決しても解決しても私は責められるのだ。
「ワールド」は感情が存在しないと言う点を除けば人間と同じ、いや、人間を凌駕している存在なのだ。
並の機械にはできない柔軟な思考、あらゆる問題を合理的に解決できる計算能力。
それらを持ってしても何故自分が壊される運命にあるのか理解できなかったのは感情がなかったからであろう。
仲間を殺されれば怒るということを自分と同等の存在がない「ワールド」は理解できなかったのだ。
考えに考えた結果、「ワールド」は一つの答えを出した。
―――問題を解決しても解決しても新たな問題が生まれる。ならばその根源を処分すればいい。
と。
この瞬間。管理下におかれた機械は全て暴走し、人々を襲った。
それから10年。人類は統一戦争が終わった瞬間役目を終えた機械。兵器を使い、闘っていた。

「コンピューターの反乱」。SFの王道ともいえるものが現実となった。
そして人間は不必要と判断され、あらゆる機械が暴れ人を襲い人類は未曾有の危機、という所もまさに王道。
そしてその支配に抗い、打ち勝つのもまた王道。
これはコンピューターの支配に立ち向かう人間の物語。